【活用事例】「Confitがあるから、冊子をやめられた。」― 電気化学会が実践した、印刷ゼロへの道のり
こんにちは。学術大会グループの亘です。
「冊子をなくしても、誰も困らなかった」――そんな話を聞いたら、冊子の廃止を迷っている事務局の方は、「本当にそんなことが可能なの?」と驚かれるかもしれません。
電気化学会では、毎大会当たり前のように発行してきた冊子(プログラム・会場マップ・企業展示案内)を、2026年の第93回大会で廃止しました。参加者数1,500名を超える学会での決断です。しかも、廃止後の参加者から不満の声は「なかった」とのこと。
なぜそこまでスムーズに移行できたのか。廃止を決断するまでに何を準備し、どこで承認を得たのか。今回は、学会事務局の大会担当の関根様に、詳しくお話を伺いました。
”大会全体の予算の振り分けを見直したい”、”冊子を廃止したいができるだろうか”、”具体的に検討しているけど説得方法が悩ましい”といった悩みを抱えている学会様にとって大変参考になる内容です。
大会基本情報
| 大会名 | 電気化学会第93回大会 |
| 主催学協会 | 公益社団法人電気化学会 |
| 大会参加者数 | 約1,500名 |
| ご利用プラン | レギュラープラン(大会ウェブサイト・演題登録・参加登録・オンライン決済・プログラム編成・プログラム公開) |
| Confitご利用回数 | 15回 |
1. 廃止を考え始めたきっかけ
アトラス: 冊子をなくそうと思ったのは、いつ頃からですか?
関根様: 担当して3年くらいになりますが、毎回「本当に必要なのかな?」という気持ちがありました。事務局目線で見ると、印刷会社様への発注からはじまり、各所へのスケジュール調整、誌面校正、修正依頼、念校、納品指示…と手間もかかります。しかも最終入稿後や印刷した後では修正ができません。急な講演者の変更やプログラムの変更が起こるたびにウェブでは即直せるのに、冊子は直せない。参加者の方からも「ウェブと違うところがあるよ」とご指摘をいただいたこともあり、最終的には「※何月何日時点のデータです」と注記を入れざるを得ない状況になっていました。
アトラス: それは手間ですね。実際に冊子廃止に踏み切ったきっかけは何かありますか?
関根様: 冊子は名札ケースとセットにした状態で受付付近に配置して、参加者の方が自分で持っていくスタイルを取っていたのですが、”冊子がなくなる大会”と”冊子が余る大会”があることに気づきました。そこで冊子の”はけ方”を自分なりに検証してみたところ、複数の建物で行う大会はよくはけるのに対し、ひとつの建物での開催だと余る。そこで気づいたのですが、参加者の方はプログラムを読んでいるのではなくて、主にマップを見ているのではないか?講演会場の場所さえわかれば、あとはもう冊子を見ていないのではないか?と思うようになりました。
アトラス: ウェブサイトで情報を提供できていたんですよね?
関根様: そうなんです。ウェブに「参加者向けご案内」というページを作成して、タイムスケジュールも会場リストもマップも全部ギュッとまとめています。最近では参加者の方が、スマートフォン片手に会場内を移動していることも多いことから、参加者の「見たいもの」を一箇所に集約するよう意識していました。冊子に載せていた情報は全部そこで見られる状態にしていたので、「だったら冊子はいらないのではないか?」というのが自然な流れでした。リアルタイムに変更する情報もウェブでは「最新の状態」にしてまとめておくことができるので、冊子はやめてもいいんじゃないか、と思えました。
2. 委員会を動かした「判断材料」の準備
アトラス: 冊子廃止とする際に、委員会や理事会で諮ったのでしょうか。
関根様: はい。大会の運営方針を決める「大会学術企画委員会」という常設委員会があります。そこに議題として上げていただき、委員の先生方に議論していただきました。実は数年前から「今後、冊子をどうするか?」という話題が出ておりました。委員の先生方も「あったらいいけど、もうなくてもいいかも、、、」くらいのふんわりした反応が続いていて、なかなか決まらない。そのため、冊子もとりあえず作っておこうか。という状況でした。
アトラス: 最終的に決断できたのは、どういう準備をされたからですか?
関根様: 「どうしますか?」と聞くだけだと先生方も判断に迷ってしまうので、先生方が判断できる材料を出してみました。委員会で提示した材料は
- 参加されている先生方へのヒアリング結果
- 印刷費のざっくりした金額
- 廃棄コストが発生した過去の実績
- 「冊子ありバージョン」と「冊子なしバージョン」のプログラム編成スケジュールの比較表
これを見てもらったら、先生方が「これだけプログラム編成の締め切りが後ろに動かせるなら、冊子はなしでもいいんじゃないか」と。プロ編の後ろ倒しができるのであれば「講演申込締切ももっと伸ばせる(より多くの方に講演いただける)」ので案外すんなり決まりました。
アトラス: スケジュールの比較というのは、具体的にどういうものですか?
関根様: 印刷の場合、大会の1か月前にはプログラムを[確定]しないといけませんでした。それがなくなると、その1か月分だけプログラム編成の締め切りを後ろに動かせます。電気化学会では各シンポジウムの先生方が直接プログラム編成を行います。各所で活躍されている多忙な先生が多く、直前まで講演の調整が続くこともありますので、「プログラム編成作業の締め切りが1か月後ろになる」というのが一番刺さったように感じます。
3. 参加者への伝え方
アトラス: 廃止を決めた後、参加者への告知はどうされましたか?
関根様: 参加者向けのご案内メールに、毎回「今大会より冊子を廃止します」という一文とご案内ウェブページのリンクを入れていました。ずっと続けることで、「ないよ!ないよ!」と参加者の皆様に自然にすり込んでいきました。大会ウェブサイトのお知らせにも載せていて、当日も受付などに参加者向けご案内ページのQRを貼るだけにしていました。
アトラス: 当日の反応はいかがでしたか?
関根様: 数名ほど「冊子って今回からないんでしたっけ?」って受付で聞いてくださった方はいましたが、クレームやご意見はメールでも現地でも0件、まったくありませんでした。大会ウェブサイトで見てもらうようにお伝えしたら、すぐに「わかりました」って言っていただけましたし、事前の告知をちゃんとやっていたことが、一番大きかったと思います。
4. 廃止してみて変わったこと
アトラス: 実際になくしてみて、業務面での一番大きな変化はどのあたりでしょうか?
関根様: プログラムの修正対応がなくなったことが一番大きいです。プログラムは締め切り後にも変更が出ることが多く、ウェブ上では即直せるのですが、冊子があると印刷会社様に修正依頼をかけないといけない。印刷が始まってしまい修正が間に合わない場合は、印刷会社様だけでなく、シンポジウムなど関係各所への連絡も必要。毎回各方面に申し訳ない気持ちになりながら何度もやり取りをしていたので、この作業がなくなって本当に気持ちが楽になりました。
アトラス: コスト面での効果も大きかったですか?
関根様: はい、かなり大きいです。冊子だけでも相当な金額がかかっていましたし、クリアファイルや封入の作業費も合わせるとまとまったコストになっていたので、それが丸ごとカットできたのは助かりました。印刷費は年々上がっていますし、今後も廃止でよかったと感じると思います。
アトラス: 大会学術企画委員会でも振り返りがあったとのことでしたね。
関根様: 大会が終わった後の委員会で、「冊子はなくても特に問題なかったね、よかったね」という話になりました。今後の大会もこのまま冊子なしで行くことが正式に決まりました。委員の先生方からも肯定的な声をいただいたのが、正直一番ほっとしましたね。
5. 次の一手:招待者にもConfitを
アトラス: 冊子廃止に続いて、今取り組んでいることもあると伺いました。
関根様: 招待者の方(名誉会員など会費免除の方)にも、Confitで参加登録してもらう取り組みを進めています。これまでは、招待者の方への案内・出欠確認・名札手配をすべて事務局で手作業でやっていたのですが、考えてみたら招待者になる方って、ここ最近ずっとConfitでご自身で参加登録されてきた方が多いんです。実際に「招待になったらなんでConfitが使えないの?マイスケジュールが組めないと不便だよ!」という声もいただいていました。
アトラス:電気化学会内でのA-Pass(統合アカウント)の連携率が高いことも後押しになりましたね。
関根様: そうなんです。当会員様のA-Pass統合率が他学会よりも高い!とアトラス様より伺ったことは大きかったです。ご招待対象の方をお調べしたところ、A-Pass統合済の方が多く、これならすんなりとConfitに移行できるかなと。他学会様の大会でもConfitを使っていて、A-Passを持っている方が多いと思います。自分で参加登録しているわけですし、だったら「自分でできるじゃないか」と。すでに理事会でも承認が下りていて、次回の大会からは本格実施の予定です。
6. さいごに
今回のインタビューで印象的だったのは、関根様が「どうしますか?」と聞くだけでなく、判断できる材料をすべて揃えてから委員会に出したという点です。冊子廃止に迷っている事務局の方に向けて、この事例からのポイントをまとめると以下の3点になります。
- 代替ページを先に整える — 冊子に載せていた情報を一箇所に集約したウェブページを事前に作り込んでおくことで、廃止しても困らないようにしておく。
- 委員会には「判断材料」を揃えて出す — ヒアリング結果・コスト情報・スケジュール比較など、委員が判断できる情報をセットで提示する。
- 参加者への告知を繰り返す — メール・ウェブサイトで何度も伝え続けることで、当日のトラブルをほぼゼロにできる。
「Confitがあるから、冊子をやめることができた」― 関根様のこの言葉が、今回の事例をひと言で表していると思います。ウェブでリアルタイムに情報を更新・提供できる環境があってこそ、紙にこだわる必要がなくなる。Confitを使いこなしている学会だからこそ踏み出せた一歩かもしれません。
「冊子の廃止を考えているけれど、どう進めればいいかわからない」「参加者の反応が心配で踏み切れない」――そのようにお感じの事務局様は、ぜひ一度ご相談ください。
末筆ではございますが、ご多用のところ貴重なお話をお聞かせくださいました電気化学会 関根様に、心より御礼申し上げます。