【Confit】時代に合わせて大会運営を変化させていく(日本鉱物科学会様の事例)
こんにちは。セールスの田口です。
桜が咲く頃ですね。私は3月生まれということもあり、春が一番好きな季節です。いつも朝の通勤は少しナーバスな感じになりますが、桜が咲いたころの通勤は気持ちが少し違いますよね。
さて、各学会とお話をしていると、時代や環境の変化に伴って大会運営も変化させる必要があるものの、なかなかそこに進むプロセスや決断が難しいというお声を聞きます。
例えば、要旨集、抄録集の冊子体をやめてオンラインでの閲覧のみにすることや、プログラム作成までの公開工程を簡素化・効率化するためのIT化はどれも作業の変化とコストが伴います。会員のために利便性を高めるための取り組みをしようとも、これまでどおりの費用では難しく、その費用の負担をどうするかも悩ましい課題です。
その中で日本鉱物科学会様は数年かけて一歩一歩変化をして進めてこられました。会員や参加者への説明を丁寧に実施され、この数年で作業面、費用面と大きな変化があったものと思います。
弊社も学会様に伴走し、寄り添ってきた立場として、学会様と共に過去の経緯をまとめ、実際に日本鉱物科学会様にお聞きした内容をまとめてみました。
現状の悩み事を何とかしようと、これから何か行動を起こそうと思っている学会様にとって有用な情報となれば幸いです。
大会情報
大会名 | 一般社団法人日本鉱物科学会 年会・総会 |
会員数 | 約800名 |
講演数 | 約200件 |
参加者数 | 約300名 |
以下、日本鉱物科学会の大会における最近の変遷をまとめてみました。
動きがあった年 | 変化 | Confit利用範囲 |
2017年~2018年 |
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演題登録のみ
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2019年 |
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Confit All in One |
2021年 |
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Confit All in One
e-poster機能
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2023年 |
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Confit レギュラープラン |
この数年で上記のような変化があったのですが、特に以下3点について学会事務局様に聞いてみました。
- 予稿集(冊子体)を不要にしたこと
- Confit導入にあたって参加費アップをしたこと
- All in Oneの利用で1ソースでデータを扱えるようになったこと
冊子体の廃止
冊子体廃止のきっかけはなんでしょうか。
2016年まで長年冊子体を発行しており、Confitは演題登録のみ利用していました。
アトラスさんからはConfit All in One(講演要旨公開システム)の説明を何度かいただいていました。講演要旨冊子体廃止と共にプログラム編成、公開作業の効率化について委員会に毎年説明しておりましたが、費用の面で難しくなかなか利用に至りませんでした。
事務局から委員会に向けて何度も利便性や効果を説明した結果、講演要旨集冊子体廃止、WEB化に向けての見積を取ることが正式に認められました。ただ、すぐにConfit All in Oneの導入になったわけではありませんでした。
最初(2017年)は冊子体を印刷していた会社が開発していた「プログラム編成・講演要旨公開システム」を冊子体印刷費用と同額で提供できるとのことでしたので、費用の心配もなかったことから委員会にもご理解いただき、これを機に思い切って、講演要旨の冊子印刷を廃止し、そして同社から提供された「公開システム」を利用することになりました。(個人的には、このシステム利用で慣れていただき、諸問題解決と共に次にステップアップ、Confit All in One利用に移行できればと思っていました。)
実際に冊子体無しで大会を実施してみたら、ほとんどの参加者は日本地球惑星科学連合(JpGU)の大会経験で要旨集電子版のみの提供に慣れていてましたが、一部参加者から冊子体廃止へのご不満もありましたので、プログラム冊子のみ自前印刷で参加者全員へ配布したり、PDFファイルダウンロードサービスなどを提供したりしました。
まずはこのような形で2018年まで2年間実施していました。「講演要旨公開システム」を含むリーズナブルな費用といった一番のメリットはありましたが、利用していくうちに、システムの動作が少し遅いことと、講演発表毎に講演要旨PDFが閲覧できないこと、デザインの一部が希望どおりにならないことなどの課題が見えてきました。また当時は大会後に従来どおり、J-STAGEでの公開をしなければならず、その作業と費用の負担は減ることはなく、更に増えていました。
2019年からConfit All in Oneの利用に
2019年からConfit All in One利用になった理由はなんでしょうか
2018年までConiftは演題登録のみ利用していたのですが、2019年からConfit All in Oneに移すことにしました。移すことになったのは以下の理由からです。
- Confit All in One費用の捻出は、学会の行事委員会とLOC(現地実行員会)のご尽力により参加費を少し値上げすることで対応ができることになった。
- Confit All in Oneを利用することで 、講演申し込みからプログラム編成、公開まで一貫して対応でき、事務局作業の効率がよくなることに加え、行事委員会やコンビーナーも直接作業に参加できオープンになる。
- 参加者は日本地球惑星科学連合(JpGU)で公開画面を見慣れているため操作性の不安がないことが分かった。
参加費のアップ
Confit All in One 導入と共に参加費をアップされたと思いますが、そこはどうでしたか。
参加費は以下表のように2回にわたってアップしました。
事前料金の金額推移
2018年 | 2019年 | 2021年 | |
会員(一般) | 6,000円 | 7,000円 | 7,500円 |
会員(学生) | 3,000円 | 3,500円 | 3,500円 |
非会員(一般) | 10,000円 | 11,000円 | 12,000円 |
非会員(学生) | 5,000円 | 5,500円 | 6,000円 |
学会の基本方針としては、受益者負担としています。既存の参加費で予算を考えるとなかなか算出が難しい状況だったため、学会の行事委員会とLOC(現地実行委員会)で協議した結果、上記のような参加費のアップとしました。そして2019年にやっとConfit All in Oneの導入が可能となりました。
2021年はコロナ禍で現地開催ができなかったため通常規模の初めてのオンライン開催となりました。ポスター公開は初めてConfitのe-poster機能を利用しました。これにはまた費用が掛かりましたが、上記のような参加費のアップで対応することにしました。その年のJpGUや関連学会でのポスター発表で利用されて、委員に経験者がいましたので、当学会も利用しやすい状況になり、また結果は好評でした。
参加費は上記のようにアップしましたが、学生の参加費は大きく上げることなく、指導教官が複数の学生に参加してもらえるような配慮をしています。参加者にもWebサイトで早めの告知をしています。
Confit All in One導入前の2年間は別会社ですが公開システムを利用してきたこと、コロナ禍でのオンライン開催、ハイブリッド開催での必要なシステム利用もあったこと、これらがきっかけとなり、参加者にとってもConfit利用が当然のような状況になり、参加費が上がっても参加者数は減ることもなく、良い状態を保っていると思います。
Confit All in Oneにしてよかったこと
Confit All in Oneにして良かった点を教えてください。
Confit All in Oneを導入する前は、Confitの演題登録のみ利用していましたが、演題登録したデータをエクスポートして、その後は印刷用データ、プログラムを組むためのデータとデータソースが分散していました。作業のためには必要な工程でしたが、1つのデータに修正が入ると、すべてのデータにも反映が必要でとても大変でしたし、修正されていない場合のリスクがとても高かったです。また、年会開催では総会も開催されますので、開催前の8月は総会前の準備期間で監査や理事会準備もあり、休み返上の日が続きストレスでした。
Confit All in Oneを入れてからは、データソースが1つとなり、作業が大変楽になりました。何より修正の反映漏れが無いということは大きな安心で、お陰で、監査、理事会準備に余裕が持てるようになりました。
そしてConfit All in One導入からConfitアーカイブサイトが提供され、過去の研究発表が閲覧できるのもそうですが、過去大会のウェブサイトの案内も蓄積されているので行事内容を振り返ることもできます。この結果、地味に面倒であったJ-STAGEの予稿集公開作業が無くなり、一気に肩の荷が下りました。
日本鉱物科学会 Confitアーカイブサイト
もし、他の学会にアドバイスできたら、どんなアドバイスをしますか?
粉体粉末冶金協会様のお話をサイトで拝見して、今となりましてはすっかり過去の事となりましたが、私も同じ経験をしてきたなぁと思いだしました。
アドバイスなど、大変おこがましいことですが、最近のIT状況を見聞きして私が感じたことを申し上げます。
ご承知のように、ITはどんどん進歩して、現在は幼稚園児からスマホやYouTube、Web検索などをするのが生活の一部になり、小学生もタブレットを持つのが当たり前の時代になっています。若い方々にとっては、Confit利用が当たり前の時代です。年配の方への何らかの配慮も大切ではありますが、いつまでも年配の方への対応を考慮していると先に進めないと思います。当学会は費用の面でなかなか進めませんでしたが、ゆっくりでもステップを踏んで変化をしていき、時代にあった大会の運営をすることがこれからは必要だと思います。10年後はどのような大会方法で開催されるのでしょうか、アトラスさんの今後の更なる発展を期待しております。
終わりに
日本鉱物科学会様と弊社では約20年のお付き合いとなります。そして学会事務局のご担当である宮地様がこのたび3月に学会事務局業務を退任されることになりました。
学術大会に限らず、学会事務局業務全般、そしてジャーナルの編集業務まで多岐にわたった業務をされてこられたので、この数年はその業務の引継ぎの検討もあったようです。
結果、学術大会業務は行事委員会が主体で、学会事務局業務、ジャーナル編集業務はアウトソースという結論になったようですが、どれもITシステム上にこれまでの事務局様のノウハウが溜まっていることで大きな心配はなさそうだとのことでした。
どこも人材不足となってくる世の中です。こういった役割をどうするかという問題はどこでも出てくると思いますが、ITシステムが入っていることでの安心を作っていかないといけないなと思いました。
今回本ブログの執筆にご協力いただいた日本鉱物科学会の宮地様に厚く御礼申し上げます。こちらの記事が多くの学会様の参考になればと思います。